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2020年7月27日月曜日

[読書感想文] Measure What Matters


Measure What Matters

日本語版はこっち
Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR

Who should read this?

OKRを会社で導入した、あるいは導入しようとしているが、いまいちこれでいいのかわからなくてしっくりこない感覚を持っている人。


Impression

OKRの使い方はとてもシンプルなものである。わくわくするような目標としてのObjectiveと、それをどうやったら実現できるのか見える化するための指標としてのKey Resultを作成するだけである。ただ、シンプルが故にどのようにでも応用できてしまうので、それを効果的に会社組織に適用するのはなかなかハードルが高い。MBOなどのそれまでの方式と根本的に何が違うのか、という感想は多くの人が抱いたことがあると思う。

「覚えるのは1分 極めるのは一生」はオセロのルールとしてのシンプルさと、ルールを使用したときの奥深さを表す表現として有名だが、OKRにも同様のことが言えるだろう。

本書の前半(Part 1)は、GoogleやIntelなどを始めとする企業がどのようにOKRを導入し、どのような効果を実感しているかが紹介されている事例集となっている。過去の棋譜を読むような気持ちで、先行研究をするのに最適である。

後半(Part 2)は、OKRと並列して導入されるべきツールであるCFRについて触れられている。CFRはCommunication(対話)とFeedbackとRecognition(承認)を意味する。ObjectiveとKey ResultをOKRで設定したあと、CFRによって十分な関係をメンバと築くことが推奨されている。

下記は本書で紹介されていた図である。シンプルでわかりやすく、また個人的にとても印象的だったので、ここに紹介する。OKRを評価・昇給と直接連動しないように切り離したものにしつつ、CFRによって対話・フィードバック・承認を行うことを意味しており、ただ単にOKRだけを導入することの不十分さがひと目で分かる。





2020年3月8日日曜日

[読書感想文]バイリンガル教育の本

2冊ほど呼んだ。同じような内容であり、同じような感想を持ったのでまとめて書く

読んだ本

子どもの未来を広げる「おやこえいご」 ~バイリンガルを育てる幼児英語メソッド~
おうちでほぼバイリンガルの育て方

まとめ


日本人夫婦が日本で子育てを行い、子供をバイリンガルに育てる実践が書かれている。
インターナショナルスクールなどには通わせず、最低限の英語教室と母親による家庭教育が中心の様子。

子どもの未来を広げる「おやこえいご」 ~バイリンガルを育てる幼児英語メソッドの単著者を含む、計4人が自身の子供をバイリンガルに育てた経験を綴った本。実践内容の細かい違いはあるが、大抵は母親の献身的な本、DVD、Youtubeを使った大量の英語のシャワーを行っているようである。

感想

やはり、尋常でない母親の献身ぶりが目を引く。大量の英語の本やYoutubeを駆使して、英語をインプットさせ、母親が自然な雰囲気で英語で話しかけることにより、英語力を身に着けさせているようだ。

英語の本やYoutubeを見せるあたりは安価であるので、親のモチベーション次第で真似はできそうである。他のバイリンガル本と同じく、育った子供がどの程度、英語と日本語が身についているのか、客観的に伺い知れる情報がないことだけが残念か。

[読書感想文]バイリンガルを育てる

バイリンガルを育てる

まとめ

英語教育やバイリンガル教育が専門の湯川笑子博士が自分自身の二人の子供にバイリンガル教育をさせたときの記録集。体験や観察をもとに論文も書いているようであり、詳細な記録は参考になる。

教育内容として大きく目をひかれるのは下記のような事柄

  • 子供には常に英語で話しかける。
  • 幼少期に英語の本の読み聞かせを毎日30分から2時間程度
  • ネイティブなEnglish Speakerと多くの交流があり、自宅にホームステイさせたり等、子供をInternationalな環境においていた。
  • 子供は幼少期に海外で教育させた。
    • 長男。4ヶ月-1歳半と5歳5ヶ月-5歳10ヶ月までハワイ、6歳-8歳ころにスウェーデンの幼稚園、学校に通う
    • 長女は4歳-5歳ころにスウェーデンの保育園に通う

感想

おうちでバイリンガルおやこえいごなどを読んだときも同じ感想を抱いたが、やはり親(特に母親)の尋常でない献身ぶりが目を引く。毎日2時間も英語の本を読み聞かせるだけでも、尋常でない気力が必要だし、ましてや海外に引っ越して現地の教育を受けさせるなどというのは並々ならぬ覚悟がいるだろう。著者の場合は、自分の研究テーマと同一していることもあり、仕事のキャリアと英語教育のメリットを同一化させられたのも大きな要因であろう。

参考にはなるが、一般的な日本人にとってすぐさま真似できそうな実践はなさそうである。また、結局この本で行ったバイリンガル教育の結果、成人した子どもたちがどのような英語力・日本語力が身についたのかが不明なのも実践の効果を伺い知れる情報がなく残念ではある。



2019年8月12日月曜日

SCRUM BOOT CAMP THE BOOKを読んでみた

SCRUM BOOT CAMP THE BOOK




スクラムについて一通り学べる。基礎編と実践編の二部構成になっている。
基礎編で用語や概念が説明され、実践編ではそれをどのように適用していけばよいかが説明されている。

座学で得られる限りの情報はこの本で学べるのではなかろうか。

特に実践編ではスクラムを現場にどのように導入していく様子が漫画のストーリで描かれており、イメージが付きやすい。

スクラム導入のための本としては良本。

2019年1月12日土曜日

「エンジニアのためのマネジメントキャリアパス」を読んで管理職について考えてみた


エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド


を読んでみた。

入社されたばかりの被管理者であるSoftware Engineerから始まり、チームを束ねるTech Lead(TL)、管理職や管理職の管理職、そしてVP of Engineering(VPoE)やCTOなどの役職について、期待される役割や課題などを説明している。ざっくりと昨今のTech界隈の役職を俯瞰するのには最適の一冊であろう。

よくまとまってて読みやすい書籍ではある。ただ、ちょっと身も蓋もない言い方になるのだが、会社の役職なんて同じ名前でも役割が違うので、これを読んでどう活用するかは若干難しい。原著は米国の書籍であるので、当然のこととして、日米の文化的・法律的な差異もあるはずである。技術書のように、これを教科書として絶対視しても意味がないので、著者の界隈ではこういう共通認識で回ってるのだろう、といった参考程度に勉強するのが好ましいのであろう。


一点だけ大きく興味をそそられた箇所があった。
5.1節の「ITスキルの維持」の記述のところである。

管理職に転向した後の技術的知識のアップデートに関する主張であり、これ以上コードを書いても技術力が頭打ちになるラインまでは管理職になってもコードを書き続けよう、ということであった。技術力がしっかりと身につくまでは、管理職としても大成できない。そして上級の管理職になってからも何らかの技術的コミットメントを続けるべきだ、と。この意見はとても正しく思える。

私もソフトウェアエンジニアとしてのキャリアの中で、エンジニアから管理職に転向した方を多く知っている。ほとんどの方は、Mangerに転向したのを機にコーディングを行わなくなる。その結果、例えば20世紀にWindowsアプリの開発を行っていた人が、Windowsアプリのパラダイムのままネットの技術を語ったり、クラウド以前のInternet上でWebアプリを開発していた人が、その価値観のまま、クラウドの技術を捉える、といった状況に多く遭遇した。表面的な知識は間違ってないのだが、「それは根本的に考え方が違うんだよなあ」、と突っ込みたくなる状況である。

もちろん、管理職という立場で時間の許す限りキャッチアップは続けているのだろうが、Webの前後、あるいはクラウドの前後、そしてマイクロサービスの前後といったような大きなパラダイムの変換があるときには、業務を前提に深くコードを書いていない限り自分の中の技術的パラダイムはアップデートできない。プライベートな時間で自分しか見ないレベルのコードを書いたとしても、当然のこととして仕事で向き合うのと理解の度合いは違う。業務外でコミットしているオープンソースがあったり、副業としてエンジニアを続けているのでない限り、どの立場になってもコードを書き続けない限りいずれその人の技術的価値観は時代遅れのものになるのだろう。


ただ、言うのは簡単だが、マネージャ業務をしながら開発業務にもコミットし続けるのはとても厳しい。解決策としては、マネージャとエンジニアを数年おきに、すっぱりとJob Changeするくらいしかないかもしれない。米国ではよく(たまに?)あるとは聞くが、少なくとも日本ではあまり聞いたことがない。もしかしたら今後はこのようなJob Rotationが必要とされるかもしれない。


2015年10月16日金曜日

[読書感想文]エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 ~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド



本書のような自分のキャリアを振り返った本を読む場合、何よりも気になるのは著者の経歴である。中には職歴が2年程度しかないのに、FacebookやGoogleのような有名企業に入ったというだけで、本の出版に至ってしまうような人も昨今少なからず見受けられる。そのような本を購入した時のがっかり感はなんとも言えない。

著者の名前で軽く検索をかけてみると、そんなことはないようだ。
新卒として日本HPに入社し、駐在員としての米国勤務を経た後、AmazonやMicrosoftなどの企業を渡りあるいているようだ。

仕事以外でも、「シアトル界隈のIT関係者が集まって勉強会や講演会などを行う非営利団体シアトルITジャパニーズプロフェッショナルズ(SIJP)の副会長」として精力的に活動されているようであり、少なくとも充分に耳を傾けてみたい経験をお持ちのように見えた。

ちなみに下記のWebサイトが面白かった。購入を迷ってる人はぜひとも読んで欲しいし、読んでしまった人でもまた違うエピソードが紹介されてたりするのでまた違った楽しみを味わえる。


Story of My Life 竜 盛博さん

シリコンバレーで管理職になる道


さて、かなり期待感を膨らませて本を読み始めたが、期待は決して裏切られなかった。
副題の通り、採用、面接、レイオフについて、客観的な情報に、自身が経験した主観を匠に織り交ぜており、一気に読み進めてしまった。採用や面接の情報は筆者自身が採用の経験が豊富であることもあり、非常に高価値な情報が満載である。

いくつか心に残ったことをメモしておく。


  • キャリアは運に大きく左右される。

これは私もしみじみと実感していることである。私も海外赴任に手を上げて、どう選ばれるかも不明なプロセスを何年も待ち続けたことがある。成果を出せばいいという簡単なものでもなく、その時の募集状況やプロジェクトの予算など自分の努力ではどうしようもない要因に悩まされた。


  • レイオフは避けられないので、されてもすぐ転職できるように日頃から準備するしかない。

私はまだレイオフを経験したことがない。しかしこれは真理なのだろう。心に止めておかないと行けない


  • 35歳プログラマ定年説のないアメリカでも、50歳を超えると転職は難しい

50歳になって米国で職が見つからない場合、日本での求職はもっと絶望的だろう。米国で働き続けるのならば、これが最大のリスクといえるかもしれない。


本書は、「はじめに」に筆者がいうように、米国でソフトウェアエンジニアで働くことの美点しか強調されない昨今の風潮に違和感を感じメリットとともにデメリットも知ってほしいという思いで書かれている。一貫して中立した立場で書かれており、非常に読んでて安心できる。どうするべきかなど安易な結論を書いたりせず、また、筆者自身もまだ悩み続けている様子が描写されており、同じく米国で働く身として大きな親近感を抱いた。



米国で働きたいと考える人には必読といえる一冊である。




2014年11月14日金曜日

アルゴリズムが世界を支配する

タイトルにアルゴリズムとあるが、中身の多くは最近良く話題になる人工知能について割かれている。アルゴリズム自体の話よりも、いかに使われてきたか、それを開発した人たちにどのようなドラマがあったかを中心にまとめられている。

ウォール・ストリートの株式市場で人工知能が使われていることは有名だが、本書によると1987年ころには早くも使われていたとのことだ。正直、インターネットも一般的に普及していないような時代から利用されていたとは意外であった。

また、本書の別の箇所では、山をぶちぬいて二地点間を直線に高速回線を引いてしまうエピソードが載せられている。「最低でも2億ドル」と本書が述べる工事予算に出資していまう投資家がさらりと現れるところが、なんともアメリカらしい逸話だ。

金融以外では、音楽の自動作曲を試みた大学教授の話が興味深い。楽曲自体は優れたものでありながらも、自動生成されたということを知った途端、聴衆の興味が削がれている様など、古くから人工知能の限界に挑んでいた様子が詳細に描かれている。


Hatching Twitter(Twitter創業物語)


Twitterの創業にまつわるエピソードを書いた本。

Twitterを立ち上げる前に取り組んでいたサービスなども詳細に書かれており、どのような経緯でTwitterが生まれていったかよく分かる。

また創業者間の人間関係の確執なども、せきららに書かれており、Twitterの創業の場に居合わせたかのような臨場感を味わうことが出来る。正直、よく許可を出したなと思えるくらい恥部が満載なのも読み手としては非常におもしろい。

読んでいて興味深いと思ったことをいくつか纏めてみる。

1. 創業者の一人(Evan)はすでに、スタートアップで実績があった
ずっと利益0の状態なのに、なぜか投資家による資金投入が行われているのは本を読むから知っていて、アメリカは違うなーと単純に思ってたんですが、EvanはすでにGoogleにブログサービス(私も使っているこのBlogger)を売却した実績があって、スタートアップ界隈ではすでに有名人だったようだ。
別に有象無象の人間に投資を続けていたわけではなく、投資されるだけの理由がちゃんとあったわけです。あと、はじめの方はEvan本人がBloggerの売却益を回したりしていたようだ。

2. テレビ業界などのメディアが積極的にTwitterを利用していた。
最近は若干ましになった気もするが、日本のメディアのIT嫌いは異常なほど。それに比べると積極的にテレビの番組などでTwitterを利用している様子は印象的だった。


2013年11月26日火曜日

在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由

第1章 あのデモがあった日
第2章 それでも「日本」が要る!
第3章 暮らしのなかの「島」問題
第4章 日中の誤解を生むもの
第5章 「反日」下のビジネス
第6章 国境を超え伝える
第7章 隣人との未来へ




悪化する日中関係のさなかにおいて、中国に住む日本人は日々友人や家族から安否を気遣われている。日本のメディアを通してみる反日としての中国は、攻撃的で破壊的であるようにしか映らない。

しかしながら現地に住む日本人によれば、日本のメディアで報じられているほど危険な状態ではなく、またすべての中国人が日本嫌いなわけではなく、親日的な人たちも少なからずいるとのことだ。

本書ではそのような現地の人達の声をまとめた本である。

本を読むについて、日本人と接触したことがなく、反日教育の影響でただ当然のように日本を嫌っている中国の現状が窺えてくる。そのため、わずか数分の日本人との交流で、急に友好的な態度に改める者も少なくないようであり、そのような記述が随所に描かれている。実態を知らないからこそ、盲目的に嫌うことが出来るのであろう。

確かに、私自身を思い返して中国に大してマイナスなイメージを持っていないのは、日本で知り合った多くの中国人留学生のおかげである。彼ら彼女らが非常に友好的で、なんら日本人と変わらず付き合えることを知っているし、今でも同じ職場で仕事をしているおかげで、日本のメディアの報道を客観的に受け止められているといえる。

そう考えると、国レベルではなく、個人レベルでの日中交流は、決して絶やしては行けないのかもしれない。ここまで関係が悪化すると実現自体のハードルも高くなるが、だからこそ、最低限のできることとして人と人との交友は絶えないことを願いたい。

一方でそうは言うものの、日本人というだけでタクシーの乗車拒否をしたり、安全確保の名目のためとはいえ、有事には公共の場で日本語を使うのをやめるように警察から指示されるなど、冷静に考えれば異様な事態である。本書の中の人物はどなたも淡々と受け止めている様子だが、部外者の私には侮辱にも程があるように感じる。もはや反日は中国にとって文化や条件反射にさえ感じられ、関係改善は相当路が険しいと感じた。

2013年7月10日水曜日

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲



1 怖がらなければ何ができる?
2 同じテーブルに着く
3 できる女は嫌われる
4 梯子ではなくジャングルジム
5 メンターになってくれませんか?
6 本音のコミュニケーション
7 辞めなければならないときまで辞めないで
9 スーパーママ神話
10 声を上げよう
11 ともに力を


FacebookのCOOであるシェリル・サンドバーグが書いた女性のキャリアについての本。

先日日本語版も発売され、Amazonのランキング上位をキープし続けているようだ。

日本のメディアを通して見るアメリカは、女性の活躍に対して好意的であり先進的であるように思っていた。数字でこそまだまだ社会進出の割合が低いようだが、これは時間の問題であり20年後にはすんなりと多くの女性が社会の重要な地位を占めるのだろうと思っていた。

しかし、本書によれば、日本とそう変わらず、家事・育児が女性が行うことを前提とする社会的風潮や、仕事に対して活発な女性に対するネガティブな捉え方、またキャリアアップのチャンスを自ら逃してしまう要因が存在するとのことだ。

これらについて本書では興味深い研究事例が紹介されている。

10年ほどまえ、ビジネススクールの学生たちを2つのグループに分け、とあるビジネスパーソンが人脈を駆使して投資家として成功しようとしている事例を読ませた。その上で、その人に対してどのような印象を持ったか感想を述べてもらうという実験が行われた。

2つのグループに渡された事例は全く同じであるが、主人公の名前だけ変えられている。
一方は女性の名前の主人公で、他方は男性の名前の主人公であった。

結果、男性の名前が書かれた事例を読んだグループは主人公に対して好意的な印象を持ち、ともに働きたいとコメントをしたのに対し、女性の名前が書かれた事例を読んだグループは、否定的な印象を持ち、仕事をともにすることを嫌がった。

男性は仕事の評価と個人の評価が正の相関を持つのに対し、女性は負の相関を持つという、驚きつつも胸に手を当てて見れば、そことなく腑に落ちる結論が導かれている。


また周囲の人間の評価以外にも、不利な要素が潜む。

本書によれば、総じて自分に対する評価というものは、女性よりも男性のほうが高い傾向にあるとのことだ。客観的に見れば同程度だとしても、男性は自分を高く評価する傾向にある。

このため、何か新しいチャンスが有った時、積極的に飛びつくのは圧倒的に男性が多い。
そしてその結果、成果を出すのも男性が多くなる。こちらも言われてみれば心当たりのある話しである。


本書を非常に興味深い気持ちで読ませてもらったが、これを読んだ後、アメリカ人はどう考えてるのかとても気になった。

Amazon.comのレビューでは次のようなレビューが寄せられている。評価の高い好意的なレビュー2件ほどから抜粋する。

The best message to take from this book is to be aware of what is going on in the workplace. Take the opportunity to change the inequality. Don't wait for someone to "fix" things for you. When opportunities present themselves jump on them if it's what you want. Take control.  

I found myself in every chapter she wrote. I feel that her advices directly address my insecurity and help me find strength to move on to bigger and better things. 

彼女に共感し、これを変化の契機としよう、という意見だ。高評価のレビューは概ねこのような意見が多かった。

2013年7月9日時点で、総計で1123のレビューが寄せられ、注目の高さが伺われる。
そのうち、963件が星4つ以上であるので、米国では好意的な問題提起として捉えられているのだろう。


個人的にあこのような本を読んでいつも心配になるのは、変化の流れをすべての人間に当てはめようとする人が現れることである。とりわけメディアは女性の社会進出を煽り、すべての女性は仕事を家庭を両立しなければならないかのように掻き立てる。

この懸念については本書でもところどころ触れられているが、問題の解決の際には個人の志向性を最大限尊重させながら取り組む必要があるだろう。


シェリル・サンドバーグ自身も問題は多数あれど解決は困難なことを認めている。
それでも女性が政治、産業のトップにもっと進出することによって、世の中が良くなることを渇望している。

私自身も、すべての人が望む生活をおくるのに支障が少しでも少ない世の中になるのはとてもいい事だと思う。





 TEDで講演した時の動画。

2013年4月21日日曜日

機械との競争

第1章 テクノロジーが雇用と経済に与える影響
第2章 チェス盤の残り半分にさしかかった技術と人間
第3章 創造的破壊ー加速するテクノロジー、消えてゆく仕事
第4章 では、どうすればいいか
第5章 結論ーデジタルフロンティア



コンピュータのが進化するにつれて、人間に任せるまでもない仕事が増えてきた。

例えば、ここ20年くらいで秘書の仕事が激減したということはよく報じられている。他にも事務仕事は減り続けているだろうし、今後も減少の一途を辿ることももはや常識だろう。

コンピュータの処理速度は日進月歩で向上し、価格の下落も激しい。そのような中、もはや人間が勝負を挑み続けても勝ち目は到底ない。

そこで、勝ち目のない競争(race against machine)を挑むのではなく、上手く利用してやろう(race with machine)、というのが本書の提案となる。

計算能力などでは無類の強さを誇るコンピュータも新しいアイデアを出したり人とのコミュニケーションを必要とする分野ではまだまだ人類を伍する事ができない。コンピュータの演算能力を存分に利用し、価値のあるサービスを提供することが必要となる。


ちょうど、最近、電王戦というコンピュータと人間の将棋の大会が行われた。結果はコンピュータの勝利ということだが、これは単に一つのマイルストーンを確認したに過ぎない。仮に人間側が勝利していたとしても、数年以内には確実に負ける宿命だっただろう。

競技としての将棋は、ちょうどオリンピックの陸上競技のように人間同士の純粋な健闘をたたえ楽しむ形で意義が存続できるという主張も多いが、ビジネスという側面で考えると、またひとつ人間が磨いても金にならない技能が増えたことになる。


2012年12月28日金曜日

MAKERS―21世紀の産業革命が始まる

第1章 発明革命
第2章 新産業革命
第3章 未来の歴史
第4章 僕らはみんなデザイナー
第5章 モノのロングテール
第6章 変革のツール
第7章 オープンハードウェア
第8章 巨大産業を作り替える
第9章 オープンオーガニゼーション
第10章 メイカーズの資金調達
第11章 メイカービジネス
第12章 クラウド・ファクトリー
第13章 DIYバイオロジー


3Dプリンターの普及による次世代を描いた本。

ソフトウェアの世界でオープンソース化が起きたように、今度はハードウェアの世界でオープンソース化(オープンハードウェア)が起きると予見しています。

思いついたアイディアをCADなどのデジタルツールで設計し、最近話題の3Dプリンタで試作品を作りフィードバックを行い、SNSなどを通じて賛同者を募り、そこで製品を気に入った人から資金を集めて会社を起こしていく。これによってスタートアップの障壁は一段と低くなり、新たに多くの企業が花開く新しいものづくりのあり方が描かれています。


実用ベースでどこまで作れるのかはまだまだ未知数ですが、少なくとも趣味ベースではとっても面白い未来がまってそうです。

2012年11月4日日曜日

「枯れた技術の水平思考」とは何か?

第1章 横井軍平の「ものづくり」
第2章 <バーチャルボーイ>とは何だったのか
第3章 偉大なる「すきま産業」

任天堂でゲームボーイとかバーチャルボーイとか開発した人であり枯れた技術の水平思考という言葉で有名な方です。本書は彼のインタビューを追いながら、彼のゲーム開発の哲学を追求することを目的としています。

ざっくりと説明してしまうと、枯れた技術とは、世の中に広く流通し、安価に応用出来る技術のことです。一方、水平思考とはそれを普通の人が思ってもいなかった使い方に流用することです。

例えば、枯れた技術の水平思考の適用例として、ゲーム&ウォッチを挙げることができます。

ゲーム&ウォッチは電卓の技術を利用して作られています。発売当初に最先端の技術を駆使して開発された電卓は、40万円以上もしましたが、やがて時が立つにつれコモディティ化が進み、その頃には数千円で購入できるようになっていました。横井氏は、出張中に電卓を叩いて遊んでいるサラリーマンを見かけ、それをゲームとして再利用することを思いつきました。


彼は娯楽を安価な値段で提供するために、コストの安い枯れた技術を使用することに哲学を持っていました。そんな横井氏は、今の最新技術を求めてゲームを作る風潮をこう表現しています


いまのゲームは松茸とフォアグラで餃子を作っているようなもんですね。

ゲームは娯楽(餃子)で安くないと買ってもらえないから、高価な技術(松茸とフォアグラ)でつくるなんて矛盾してるよ、とウィットな表現で問題提起をしています。確かにちょっと前にはSONYがPS3を5万円と、当時の相場を大きく越える価格設定をしたために普及の妨げになりました。昨今でも任天堂が3DSを高価格で販売したために売上不振に陥り、わずか半年で異例の値下げに踏み切ったのは記憶にあたらしいところでしょう。

また本書を読んでいると、枯れた技術を利用しているのはコスト観点からだけではないような気がしています。横井氏は主体的に遊べる、素朴な、創造的なゲームを追求しているようで、それが次のような発言に表れています。


TVというのはあくまでも情報機器であってクリアなほうがいい。
けれど遊びというものには、それは必要ないんです。
もっと想像の世界があったほうが膨らみがあるということを感じますね
ゲームを考えるときに、まずは◯とか■でどういうことをしたら面白いか考えるわけですよ。次のその映像を何に置き換えるかという時にどうしたら、それを説明書なしに理解できるかという How To Playをキャラクターに置き換えるのです。それが本来のゲームの姿なんですよ。


彼はもともとウルトラハンドやラブテスターなどTVゲーム以前の素朴な技術を使っておもちゃを作ってた人でした。なのでTVゲームと言えどもグラフィックがきらびやかなだけのゲームは好まないのでしょう。

最近のゲームはオンラインゲームやソーシャルゲームに代表されるように、本能的な刺激にボタンを押すだけのゲームが多くなっています。主体的に遊ぶゲームと言うよりは、もはやパチンコやパチスロといったジャンルに近いです。

いい悪いは別として、彼の望んでいる方向とはまったく逆の方向にゲームは進化し続けています。どちらかといえば古き良き任天堂のゲームが好きな私としては彼の早い死を惜しく思ったりします。

2012年10月11日木曜日

中国人エリートは日本をこう見る

プロローグ 実は小泉元首相は人気がある?

第1章 中国人はなぜ日本が好きなのか
第2章 日本はとても居心地がいい国
第3章 日本企業は人材をじっくり育ててくれる
第4章 でも、日本人の仕事は細かすぎて…
第5章 「日本人は幸せだ」と思えるこれだけの理由
第6章 やっぱり不思議な日本人の性格と行動
第7章 日本人が見ているのは「昔の中国人」です

エピローグ 隣国という関係は永遠に続く

本書は著者が、中国人エリートと会話した内容を元に作られているるようです。
中国の国内外のトップ大学を卒業し、華々しく活躍している20~30代の中国人が日本を
どのように見ているか。


同世代の私としては非常に興味深く読ませていただきました。

本書を手に取る前からも、各所では実は中国人は日本を評価している、といったような
話は聞いたことがありました。でも、そんなの30年くらい前の過去の日本のイメージですごいとおもってるだけでしょ、今の実態を知ったらそんなこといわないでしょ、なんて思ってましたが本書を読むとそうでもなさそうです。


「今は中国が世界中から注目を集めていますが、それはつい最近のこと。日本の電車の正確なダイヤ、落ち着いていていつも綺麗な服装で街をあるく人々。来日して社会の成熟度とか民度とかいう点でも中国は日本には絶対にかなわないなと実感しました。少なくともあと何十年かは追いつくのは無理だとおもいました」

「私達の生活は以前に比べれば良くなっていますが、日本に旅行をしたことがある人は日本との桁違いの生活レベルの差を実感しているはず。だから日本を抜いて第二位だと言われてもなんとも思いません。むしろ恥ずかしくなるくらい。どんなに経済成長してもこの汚い空気と安全かどうかもわからない食べ物を心配しながら食べてる私達の姿を想像してみて下さい。」

なるほど。日本の生活レベルはまだまだ高いとのこと。
そしてこれに加えて日本を羨ましく感じるいくつかのエピソードが紹介されています。

「日本では能力されあれば、外国人でも日本人と対等に仕事ができるし、日本の法律に則って日本で起業することもできます。でも中国ではどんなことでもすべてが濃い『人間関係』で決まるんです」

「自分の能力次第で誰に頼らずとも道を切り開いていける。強いコネがなくとも純粋に仕事を頑張っていればある程度は出世の道がひらける。他人とフラットな付き合いをしていれば普通に生活ができる。そんな日本が羨ましい。日本人は本当に幸せだと思います」

中国はコネ社会なため、何をするにもコネが必要になるととか。コンサートのチケットを買うのにも、仕事を回してもらうにも何をするにも日頃のお付き合いが重視されそれがかなりのストレスになるとのこと。本の中で日本がシステマティックとか効率的とか言われてたりしますが、正直、毎日のように日本組織の非効率性がパッシングされていることを思い出すと、非常に違和感のある褒め言葉です。

日本のシステムは非効率で全くいいところなし。いろんなところでこんな言われ方をしています。確かに、これは事実なのかもしれませんが、冷静に周りを見渡せばまだ機能してる方のシステムに分類できるのかもしれません。

また書籍の中ではここでも引用させていたように、たくさんの中国人エリートのコメントが載せられています。コメントは洞察が深く、彼らの教養の深さを感じさせられました。三島由紀夫の著作についてコメントをしてる方もいたりして、正直そんな本まで読んでるのかと感心させられます。

グローバル・グローバルと巷間騒がれてますが、世界がもっとフラットになったら彼らとガチンコバトルがスタートするんですよね。もう負けちゃいそうです。

タイトルにもあるように、本書は若手中国人エース達が見ている日本と中国についてのありのままが書かれています。中国について少しでも興味のある方は手にとって読んでみる価値のあると思います