2012年11月4日日曜日

「枯れた技術の水平思考」とは何か?

第1章 横井軍平の「ものづくり」
第2章 <バーチャルボーイ>とは何だったのか
第3章 偉大なる「すきま産業」

任天堂でゲームボーイとかバーチャルボーイとか開発した人であり枯れた技術の水平思考という言葉で有名な方です。本書は彼のインタビューを追いながら、彼のゲーム開発の哲学を追求することを目的としています。

ざっくりと説明してしまうと、枯れた技術とは、世の中に広く流通し、安価に応用出来る技術のことです。一方、水平思考とはそれを普通の人が思ってもいなかった使い方に流用することです。

例えば、枯れた技術の水平思考の適用例として、ゲーム&ウォッチを挙げることができます。

ゲーム&ウォッチは電卓の技術を利用して作られています。発売当初に最先端の技術を駆使して開発された電卓は、40万円以上もしましたが、やがて時が立つにつれコモディティ化が進み、その頃には数千円で購入できるようになっていました。横井氏は、出張中に電卓を叩いて遊んでいるサラリーマンを見かけ、それをゲームとして再利用することを思いつきました。


彼は娯楽を安価な値段で提供するために、コストの安い枯れた技術を使用することに哲学を持っていました。そんな横井氏は、今の最新技術を求めてゲームを作る風潮をこう表現しています


いまのゲームは松茸とフォアグラで餃子を作っているようなもんですね。

ゲームは娯楽(餃子)で安くないと買ってもらえないから、高価な技術(松茸とフォアグラ)でつくるなんて矛盾してるよ、とウィットな表現で問題提起をしています。確かにちょっと前にはSONYがPS3を5万円と、当時の相場を大きく越える価格設定をしたために普及の妨げになりました。昨今でも任天堂が3DSを高価格で販売したために売上不振に陥り、わずか半年で異例の値下げに踏み切ったのは記憶にあたらしいところでしょう。

また本書を読んでいると、枯れた技術を利用しているのはコスト観点からだけではないような気がしています。横井氏は主体的に遊べる、素朴な、創造的なゲームを追求しているようで、それが次のような発言に表れています。


TVというのはあくまでも情報機器であってクリアなほうがいい。
けれど遊びというものには、それは必要ないんです。
もっと想像の世界があったほうが膨らみがあるということを感じますね
ゲームを考えるときに、まずは◯とか■でどういうことをしたら面白いか考えるわけですよ。次のその映像を何に置き換えるかという時にどうしたら、それを説明書なしに理解できるかという How To Playをキャラクターに置き換えるのです。それが本来のゲームの姿なんですよ。


彼はもともとウルトラハンドやラブテスターなどTVゲーム以前の素朴な技術を使っておもちゃを作ってた人でした。なのでTVゲームと言えどもグラフィックがきらびやかなだけのゲームは好まないのでしょう。

最近のゲームはオンラインゲームやソーシャルゲームに代表されるように、本能的な刺激にボタンを押すだけのゲームが多くなっています。主体的に遊ぶゲームと言うよりは、もはやパチンコやパチスロといったジャンルに近いです。

いい悪いは別として、彼の望んでいる方向とはまったく逆の方向にゲームは進化し続けています。どちらかといえば古き良き任天堂のゲームが好きな私としては彼の早い死を惜しく思ったりします。

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