本書のような自分のキャリアを振り返った本を読む場合、何よりも気になるのは著者の経歴である。中には職歴が2年程度しかないのに、FacebookやGoogleのような有名企業に入ったというだけで、本の出版に至ってしまうような人も昨今少なからず見受けられる。そのような本を購入した時のがっかり感はなんとも言えない。
著者の名前で軽く検索をかけてみると、そんなことはないようだ。
新卒として日本HPに入社し、駐在員としての米国勤務を経た後、AmazonやMicrosoftなどの企業を渡りあるいているようだ。
仕事以外でも、「シアトル界隈のIT関係者が集まって勉強会や講演会などを行う非営利団体シアトルITジャパニーズプロフェッショナルズ(SIJP)の副会長」として精力的に活動されているようであり、少なくとも充分に耳を傾けてみたい経験をお持ちのように見えた。
ちなみに下記のWebサイトが面白かった。購入を迷ってる人はぜひとも読んで欲しいし、読んでしまった人でもまた違うエピソードが紹介されてたりするのでまた違った楽しみを味わえる。
Story of My Life 竜 盛博さん
シリコンバレーで管理職になる道
さて、かなり期待感を膨らませて本を読み始めたが、期待は決して裏切られなかった。
副題の通り、採用、面接、レイオフについて、客観的な情報に、自身が経験した主観を匠に織り交ぜており、一気に読み進めてしまった。採用や面接の情報は筆者自身が採用の経験が豊富であることもあり、非常に高価値な情報が満載である。
いくつか心に残ったことをメモしておく。
- キャリアは運に大きく左右される。
これは私もしみじみと実感していることである。私も海外赴任に手を上げて、どう選ばれるかも不明なプロセスを何年も待ち続けたことがある。成果を出せばいいという簡単なものでもなく、その時の募集状況やプロジェクトの予算など自分の努力ではどうしようもない要因に悩まされた。
- レイオフは避けられないので、されてもすぐ転職できるように日頃から準備するしかない。
私はまだレイオフを経験したことがない。しかしこれは真理なのだろう。心に止めておかないと行けない
- 35歳プログラマ定年説のないアメリカでも、50歳を超えると転職は難しい
50歳になって米国で職が見つからない場合、日本での求職はもっと絶望的だろう。米国で働き続けるのならば、これが最大のリスクといえるかもしれない。
本書は、「はじめに」に筆者がいうように、米国でソフトウェアエンジニアで働くことの美点しか強調されない昨今の風潮に違和感を感じメリットとともにデメリットも知ってほしいという思いで書かれている。一貫して中立した立場で書かれており、非常に読んでて安心できる。どうするべきかなど安易な結論を書いたりせず、また、筆者自身もまだ悩み続けている様子が描写されており、同じく米国で働く身として大きな親近感を抱いた。
米国で働きたいと考える人には必読といえる一冊である。
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